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Channel: HIGH-HOPES(洋楽ロック)
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ブルース、グラミー・レポート:大事なのは歌なのだ

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ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドのグラミー賞のオープニングを飾ったパフォーマンスについてのUSのレビューです。最後の一言はまさに!って感じ

それから、これは言っておかなくちゃいけないアデルもブルースも凝ったステージ効果は全然必要ではなかった。照明やら歓声やら、明々とした炎のようなものは何も。
大事なのは歌なのだ。



HERE'S WHERE THE STRINGS COME IN: E STREET AT THE GRAMMYS
By: STUART LEVINE (『ヴァラエティ』誌編集長)


ブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドのツアー初日に、コンサートを観たことは未だかつてないのだが、昨夜、ステープルズ・センターで行なわれたグラミー賞授賞式での彼らの演奏は、それにかなり近いものと言えるのではないかと思う。

それからもちろん、ブルースのショーに正装して足を運んだのもこれが初めてだ。でも、だからと言って、その晩の雰囲気が踊り出したくなるようなものにならなかった訳では全然ない。

オーディエンスは、当然ながらブルースのコンサートでよく見かけるような人達とは違っている。僕が思うに、グラミーのチケットの9割は音楽やエンターテインメント業界の関係者に配られている。だから、"Incident on 57th Street"や長く引き伸ばしたバージョンの"Kitty's Back"を聴きたいと叫ぶような集団とはちょっと違うというわけ。

そして、パフォーマンスの間に立ち上がるなんていうことも、めったにない。ほとんどの場合、みんなが立ち上がって拍手や声援を送るのは、曲が終わってからだ。

ブルースの話に戻ろう。前日にブルースは授賞式の幕開けを飾るのだと聞いていたので、いつブルースやバンドが登場するのだろうとあれこれ考えることはなかった。僕はブルースがステージを去った後、まだ3時間あまりも授賞式が続くので、冗談で妻に「さて、帰ろうか」と言ったくらいだ。

グラミーでは2つのステージが使われるので、ブルースが立ったステージは彼が普段ツアーで使うものの半分くらいの大きさしかなく、あまり沢山動くことはできない。けれども、限られたスペースの中で、ブルースは僕らの期待を裏切ることなく、いつも通りの情熱とエネルギーをかけてめいっぱい演奏した。(しかも、ブルースは本当のところ、ステープルズ・センターに対してあまり良い思いを持っていない。リユニオン・ツアーの時に、4夜をかけてステープルズ・センターの柿落としをやってからというもの、ブルースは2度とそこでは演奏しないと誓っている。それで古風なL.A.スポーツ・アリーナを選んでいるのだが、そちらの方がオールドスクールでブルースの昔ながらのコンサートにはしっくりくる。)

テレビではいまいち伝わらなかったかもしれないが、ステープルズ・センターにいるとはっきりと伝わってきて素晴らしかったことといえば、“We Take Care of Our Own”を一層の高みに持ち上げた崇高なストリングセクションの存在だった。そのミニオーケストラはギターなどからなるフロントラインを圧倒してしまうことなく、完璧な伴奏を提供しながら、曲に更なる力を添えていた。来月、ツアーが始まる時にはストリングスがもう少し加わっていたらどんなにいいだろう。

スティーヴとブルースがマイクを分け合って歌うのを見ていると、むろん“Two Hearts”を思い出した。そして僕は、Eストリート・バンドがまさに生きて呼吸をする組織であり、変化や胸の痛むような出来事を経ながらも、それに耐え、成長していくことのできる存在なのだということを改めて思い知った

最後のパフォーマンスが始まる直前に、制作責任者のケン・エーリックがステージに登場し、フィナーレにものすごい企画を用意したのだとオーディエンスに言った。
それから数分してポール・マッカートニーがピアノの傍を離れ、フロントステージでギターを手に取ると、間もなくブルース、デイヴ・グロールらが彼に加わった。そしてみんなでちょっとしたジャムセッションをして、その夜に幕を下ろした。

エーリックはフィナーレについて、やや大げさだったとは思うけれど、ブルースがビートルズのメンバーの1人と共にステージに立っているところを見られるなんて素晴らしい機会だった。伝説的な人物が、一晩のうちにお互いの間を行ったり来たりするなんて、音楽業界だけの話じゃなくて、生涯を通じても、そうそうあることじゃない。

その他のグラミーのハイライトと言えば、会場がアデルに対する愛情に満ち溢れていたことだろう。彼女の歌う“Rolling in the Deep”は瞬く間にオーディエンスの心を掴んだ。彼女の謙虚な様子は、エゴがしばしば制御不可能になってしまうような授賞式の場にはぴったりくるものだった。

それから、これは言っておかなくちゃいけないアデルもブルースも凝ったステージ効果は全然必要ではなかった。照明やら歓声やら、明々とした炎のようなものは何も。
大事なのは歌なのだ。


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