DAVID BOWIE by MICK ROCK展トークイベント、ロッキング・オン山崎さんの"Voice of Bowie"に行ってきた!
DAVID BOWIE by MICK ROCK展の特別講座として行なわれたトークイベントに行ってきました。 ロッキング・オン編集長の山崎洋一郎さんによる、テーマは"Voice of Bowie"。華麗なる変容を続けたボウイの、変わらない魅力〜シンガーとして歌、そして声にフォーカスして、その歴史と魅力を紐解いてゆくというもの。
山崎さんは中学生の頃南米のエルサルバドルに住んでいたそうで、そこでボウイの『ヤング・アメリカンズ』を聴いて、ここからがリアルタイム。「声」を聞いた瞬間何かが違うと感じ、そこからずっとボウイが一番好きなんだそう。本日のトークは、デヴィッド・ボウイの音楽、その中でも『歌』『声』にフォーカスした内容。「学生時代にお酒を飲みながらボウイについて語り合った、そんな雰囲気で」ということで、シンガーとしてのボウイがいかに他のアーティストと異なるのか、いかに素晴らしいのか、まつわる曲をかけながら、約1時間強にわたってのトークはとても新鮮で面白かったです。
まずはこの日のイベントに来る途中、会社でカメラマンの鋤田さんに偶然会ったり、原宿のVACANTに歩いてくる途中で偶然吉井和哉さんに会ったという話があって、ボウイのイベントの当日に起こったエピソードにまずは皆さんびっくり。この日"Voice of Bowie"のテーマで山崎さんがピックアップしたポイントとしては
●シリアスなメッセージなのにキュートに歌うボウイ
●仏教的無常観を歌うボウイ
●演劇的、シアトリカル、でも実は・・・?
●抜き差しならない真剣さで歌うボウイ
●独自のソウルミュージックへ向かったボウイ。
●ベルリン時代のボウイを支えたのは日本のファンだった
●ニューウェイヴ到来、更に先を行ったボウイ
●再度ソウルへ。ポップ・ファンク路線で大成功、でも自分を貫いたボウイ
●年を重ね、行きついた「素」のボウイの境地
「いろいろ人それぞれだけど、僕にとっては、一番大切なのはボウイのレコード(音楽)。デヴィッド・ボウイはもちろん見ているだけでもカッコいいけど、音に入り込み、ボウイの世界が見えてくると、更にカッコいいということがわかってくるはず」
と山崎さんも語っていましたが、華麗なる変化をし続けたボウイ、でも、こと音楽、歌に関しては一貫して変わらない、一本筋の通った「変わらぬもの」があったことを改めて気づかせてくれる、そんなトーク・イベントでした。
それぞれのトークのポイントと曲を下記に記してみました。
●「チェンジズ」
『ハンキー・ドリー』収録のこの曲は「変化することを恐れるな」という若い世代へのメッセージで結構シリアスなメッセージにもかかわらず。ボウイは「キュート」に「チャーミング」に歌っている。他のアーティストだとたぶんもっとシリアスに歌うはず。
●「クイックサンド」
仏教徒であったボウイ。仏教観、無常観を感じる曲が結構あって、『ハンキー・ドリー』に収録されているこの曲は「流れる砂の中で流れるままに」という特にボウイ仏教観が表れている。ファルセットの歌い方といい、力が抜けた歌い方といいい虚無感というか不思議な感じ。
●「タイム」
ボウイは演劇的ともいわれるけど、実は音楽に演劇的なものを取り入れてるシアトリカルな曲はほとんどない。フレディ・マーキュリーやピーター・ガブリエルとかのほうがよっぽどシアトリカルなわけで、ボウイは歌に関しては「普遍的」なものを求めている気がする。「タイム」という曲はやや演劇的といえるけど、そこまで大げさではない。コンセプトを変えても、ボウイの「歌」はあくまでもプレーンなもの、いろいろペルソナを演じたとしても、歌そのものは一貫して変わらないものがある。そんなところが他のシアトリカル・ロック、グラム・ロックの人たちとは違う。
●「スウィート・シング」
ボウイの歌で一番素晴らしいと思うのは、切迫感、真剣さ。まるで目の前にいる人に直接訴えかけてくるような、ボウイの声には常に「真剣さ」がある。『ダイアモンドの犬』収録のこの曲は「抜き差しならない真剣さ」「ただならぬ真剣さ」歌手としての凄みが伝わってくるヴォーカル。
●「ゴールデン・イヤーズ」
当時はロックン・ロールを期待していた人には、ボウイがソウルに行ってがっかりしたと言ってる人も多かった。でもボウイは不評をかってまでもソウルをやり、そして、それまではあまり当たらなかったアメリカで見事に成功していくことになる。アメリカ人にも通用するソウルをやってしまうところがボウイの凄いところ。ギラギラした暑苦しいようなソウルではない、ちょっとひんやりとしたソウル感、それをボウイは「プラスティック・ソウル」と呼んだわけだが、ボウイ独自のソウル・ミュージックを作り上げた。。(時間の都合でその場では曲はかけませんでしたが)
●「サウンド&ヴィジョン」
『LOW』収録のこの曲は一番好きな曲で、ボウイのすべてがこの曲の中にあると思っていた。このアルバムが出た当時はヨーロッパではがくんとセールスが落ちたけど、ただ日本のファンは高く評価していて、それをボウイも覚えていて、インタビューでもよく話がでた。2004年の来日公演の時も「世界的には失敗と言われたけど、日本のファンは支えてくれた」とMCで言っていた。
●「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」
1980年前後パンク・ニューウェイヴが出てきてすべて変わった。70年代のアーティストはオールド・ウェイヴと言われたが、ボウイはニュー・ウェイヴが到来しても常に一歩時代をリードしていた。新しい「New Wave」そのものだったともいえる。ストーンズもツェッペリンもできなかったことをボウイだけができていた。『スケアリー・モンスターズ』はニュー・ウェイヴの代表作といってもいいと思う。「Ashes To Ashes」はサウンド、アレンジ、歌い方すべてニュー・ウェイヴ的。70年代ロックが持っていたマッチョさというか油っぽさはすべて消えている。キュアー、エコー&ザ・バニーメン、ニュー・オーダーとかと同じ感性を持ってる曲。
●「レッツ・ダンス」
『ヒーローズ』は売れたけど、全体的にはアルバムが売れてるわけではなかった。もう一回「売れたい!」と思って再びソウルへ行く。そして売れ線のファンクなポップを作らせたら天下一品のナイル・ロジャースと組んで、キャリア最大のヒットとなった『レッツ・ダンス』が生まれた。ナイル・ロジャースといえばディスコの人、その人の色が出たプロデュースということで、当時はちょっとロック・ファンはがっかりしていた。でも、今改めて聴くと、全然違う。ボウイはナイル・ロジャースの本来の超売れ線のプロデュース・ワークまではさせてないと思う。ナイルのシックの一連の曲やダフト・パンク「ゲット・ラッキー」のような売れ線の作り方とはあきらかに違ってて、「レッツ・ダンス」という曲は歌詞も変、ビデオも変、ちょっと変な曲で、サウンドもニューウェイヴの延長線上ともいえる。要するにヒット・アルバムを作ろうと思ってナイル・ロジャースには頼んだけど、ボウイはボウイ自身を崩さず貫き通した。ヴォーカリストとしてのボウイとしては非常に完成度の高い、何かこれで一周したようなアルバムだった。
●「ホエア・アー・ウィ・ナウ」
『レッツ・ダンス』のあとはしばらく低迷期を迎える。あのボウイでも迷っていた。そういった意味では80年代後半から90年代は、もちろんいい曲はあったし、素晴らしい作品もあったけど、(今日のテーマの)特筆した歌、声を感じるものは、それまでと比べたら少なかった気がする。今日のイベントの最後の曲はしばらくの沈黙の後、突如復活した2013年『ザ・ネクスト・デイ』からの、全世界をあっと言わせた曲。この曲は最初から最後まで「素」のボウイ。年を重ねて、年をとることもいいことなんだということを教えてくれる、辿りついた境地、説得力のある歌。
●DAVID BOWIE by MICK ROCK展 特別講座 "Voice of Bowie"
http://peatix.com/event/241390/
ミック・ロック展は3月13日まで下記の通り開催中。ボウイ展とともに是非ご覧ください。
【DAVID BOWIE by MICK ROCK】
2017年2月25日 (土) ー 3月13日 (月)
12:00 - 20:00 (会期中無休)
at VACANT(東京都渋谷区神宮前3-20-13)
入場料 : ¥500 (バッジ付き)
詳細:http://www.vacant.vc/davidbowiebymickrock